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【第120回/ローマ字入力】

ほとんどの日本人は、ローマ字入力でパソコンを打っていると思います。
多分、当たり前過ぎて話題にもなりません。
ワープロ時代から一貫してかな入力を愛用してきた私にとって、日本社会のこの状況が不思議で不思議で仕方ありません。

唯一理解出来るのは、キーボード配列の合理性。
ABC…は26文字なのに対して、あいうえお…だと50音もあるため、キーボ-ド上で両手を広げた時、どちらが効率よく入力出来るかという勝負は明白です。

…でもね、言語は文化の柱ですよ。
日本語をアルファベットで打つ…という巨大な不条理は、そんなちっぽけな勝敗を軽く吹き飛ばします。

人は、言葉で物を考えます。
日本人にとっては、hitowoaisu、ではなくて、人を愛す、であり、umaimesi、ではなく、美味い飯、なのです。
生活する上で、字を書く場面はどんどん失われています。
ほとんどの日本人がhitowoaisuと打っていれば、そのうち、人を愛す、ことはなくなり、美味い飯、にもありつけません。

パソコンの普及で英語が世界語化してきた頃、母国語を大切にするフランスが強く抵抗している、という記事を読みました。
今の地球儀には、ロンドンを基準にした東経西経の縦線が入っていますが、「勝敗」が決着するまでしばらくの間、フランスではパリを経度0度にした地図を使って抵抗していたようです。
今の私は、電卓にある「00」というボタンやスマホのフリック入力に、僅かに明治男の気骨を感じています。

今回、何故こんなことを書く気持ちになったかと言うと、…いや、オハズカシイ、…私もようやく、ローマ字入力を、少~しずつ始めたのデス。
まだ3ヶ月程であり、その良さは全く理解出来ませんが、批判する「権利」くらいは手に入れた…と思い、書いてみることにしました。
もりてつや、だと5回打てば済むのに、moritetsuyaは、倍の10回叩きます。
今回は、敢えて乱暴な結句を…。

全国の労働者、団結せよ!
日本人の労働力を2倍使うローマ字入力に、2倍の賃金をハラエ~。

= 2020/06/16 杜哲也 =



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