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【第169回/100年後に残る仕事】

都知事選挙、真っ最中です。
立候補者のお一人が、ご自身の政見放送で「立候補者のプライバシーが保護されない今の選挙制度はおかしい」と主張されていました。

この候補者は、政治に興味があっても、多くの人が立候補に踏み切れない、今の社会状況を憂いています。
立候補出来ない大きな理由として、政治家への風当たりの強さを上げており、政治家がメディアで叩かれている様子を「殺人事件の犯人並」と表現していました。
結果として家族の猛反対に遭い、職場からも良い顔はされず、多くの人が立候補を諦めている…のだそうです。

この方は立候補にあたり、顔や本名を出していません。
当選したらAIに過去の膨大な議事録を学習させて、難しい政治判断をさせる…のだそうです。
確かに、それなら家族にもあらぬ不安を与えませんし、それどころか、会社に内緒で立候補出来る時代になっていくのかもしれません。
それだけ現代社会には、「顔を出さないコミュニケーション」がどんどん増えています。

ここからが本題なのですが、私は司法については、既にこれがほぼ出来ている気がしています。

裁判官の皆様は、難しい判決を出すにあたり、過去の判例を沢山学ぶことでしょう。
恐らく、AIのように優秀な方々ばかりと想像します。
大衆は裁判官のスキャンダルなんて興味がなく、マスコミも販売部数や視聴率に表れないので、労力を割きません。
結果として裁判官は、その大きな権力とは裏腹に、顔も名前も知らない人ばかりです。

私は、批判を浴びない権力者が増えて欲しくありません。
日々、最前線に立って組織や社会を引っ張る人には、覚悟を持って立候補して欲しいですし、思いを込めた判決を下して欲しいです。

プロの棋士がAIに負ける時代であり、芥川賞作品にChatGPTが使われる時代です。
私としては、100年後に作曲の仕事が果たしてあるのか…も実に気掛かりではありますが、このままだと、真っ先に失業するのは裁判官かもしれない、なんてことを考えました。

= 2024/07/05 杜哲也 =


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