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第183回/AI生成楽曲と作曲の行方

藤井聡太がコンピューターと対局するようなお話です。
もし、人間とAIが曲作りにおいて競うと、果たしてどちらが勝つか。
こんな話が、真面目に議論される時代になりました。

私が業界に入った1980年頃は、打込み音楽の草創期に当たります。
この分野はDTM(デスクトップミュージック)と呼ばれ、今では、音楽産業の重要な領域を占めます。
しかし当時は、どんなに上手く打ち込んだものでも、生演奏との格差は歴然としており、使う側もあくまで「代用品」と割り切っていたように思います。

DTMの発達により、生身の音楽家は多くの仕事を失うことになります。
しかし、それは主に「演奏」であって、より根源的な作業の「作曲」まで失われることはない、と私は考えていました。
それどころか、創るという行為は、ヒトにしか出来ない尊いものである、と信じていました。

最早、完全にフェーズが変わりました。
今後、作曲家たちは、多くの仕事をAIに譲ると思います。
その意味からは、藤井聡太でも歯が立たない時は必ず来ます。
しかし、作曲はそんな状況下でも続けられていく…と私は考えています。

理由はふたつあります。
ひとつは、DTM全盛の今でも演奏の仕事は存在しており、作曲はむしろ、その本質や目的がこれまで以上に明確化され、各々の中で継続し易くなると予想されること。
もうひとつは、創ることは人間の本能だからです。

= 2025/09/09 杜哲也 =

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