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第186回/When I'm Sixty-Four

この曲は、ビートルズ「サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド」(1967年)収録のご機嫌なポップ・ナンバーです。
まずは、歌詞の話から入ります。

「64歳になっても愛してくれる?」と歌う内容は、森高千里の「私がオバさんになっても」(1992年)に通じますが、こちらはあくまで男目線。
冒頭で「オレが歳とって髪が薄くなってもさぁ」と甘え、二番では「ヒューズだって交換するし、庭の手入れもする」「結構役に立つよ」と売り込んだ後、「ほら、三人の孫が君の膝に乗ってる」と仕上げます。
音楽面からは、「ユア・マザー・シュッド・ノウ」(マジカル・ミステリー・ツアー)や、「マックスウェルズ・シルヴァー・ハンマー」(アビイ・ロード)といったナンバーにも 漂う、ポール・マッカートニーの個性が前面に出た1曲です。

私は今年3月、この曲の年齢に達しました。
春まであと一息という2月の後半、音楽仲間と飲んでいる時に「歌うなら今年しかないぞ」とけし掛けられ、ついついその気になり、実際、機会あるたび歌い続けて早くも12月。
64という年齢は、現代ではまだまだ鼻たれ小僧…という気持ちがある一方、仕事上のミスも増えており、これまでとは明らかに変わったな…と感じることが多かった年です。

表現活動には定年なんてありませんし、未だに成長を感じる時さえあります。
この曲を知ったのは、12~13歳の時。
自分が64歳になってこの曲を演奏している現実は、何とも不思議であり愉快でもあります。

私にとっての音楽は、研究したり学んだりする対象というよりは、生活の中にあって社会や人を明るくする存在であることが優先されます。
音楽には、それを実現する大きな力がある一方、その実践や継続がどれだけ難しくて尊いことか。
改めてそんなことを思う、64歳の師走です。

= 2025/12/06 杜哲也 =

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