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【第25回/税金と社会保険料】

私は音楽活動もしていますが、小さな会社の事業主でもあります。

日頃から、音楽家というのは良き個人事業主であるべき、と考えています。
ただ、表現活動と会社経営では、脳味噌の使われる部分が全く異なります。
…正確に言うと、「多分異なるであろう」と想像しているだけですが、経験上これは確信に近いものです。
私は日頃、この両者を自分の中にうまく共存させていくために、少なからぬエネルギーを使っています。

例えば会社経営では、「そのお金をどこに使うか」という決断をしていかなくてはなりません。
これはそのまま、「何を大切にする会社か」ということに繋がりますが、収支バランスという現実の中での判断が強いられます。

そんな「お金の使い方」を考えた時、税金と社会保険料はある意味特別です。
これらは社会のルールなので、経営判断が及ばない領域になるからです。
つまり、ルールは従うほかありません。
そして従う際、ふたつの意味から私はいつもブルーになります。
「金額が大きいこと」と「計算方法が複雑なこと」です。

まず、前者…金額の大きさ。
こんな小さな会社からこんなに取ってどうすんの…という感じ。
今回の消費税アップも、実に影響大です。
納めたお金が社会で有効に使われることを願うしかありません。
日頃からこんなことを考えているため、納税意識の欠落した音楽家たちに出会うと、いつもやるせない気持ちになります。

次、後者…計算の難しさ。
私は単に、自分のことを自分でやりたいだけなのです。
しかも、特殊なことならいざ知らず、税も社保も間違いなく国民全員に関わる事柄。
複雑にして良いはずがありません。
自分で支払う金額を、他者に計算してもらうしかない不条理を、一体どこにぶつけたらよいのでしょうか。

もちろん、「経営」をやめて「雇われる側」になれば、このような悩みはなくなるでしょう。
しかし、そこには別の問題が発生します。
私は、雇われるのがとてもヘタなのです。
かくして、無益で複雑な計算は、今月も来月も続くのです、、、。

2012/09/01 杜哲也