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【第61回/何が失礼か】

高校出て間もない頃の話ですから、18歳か19歳だったと思います。
活動中のバンドでベーシストが抜けて困っている…という話を聞いて、勇んで応募しました。
応募時には、まだそのバンドを聴いたことがなかったので、送られてきたテープからベースパートを弾けるようにして張り切って初対面の席に臨みます。

当時の私は、あらゆる演奏に対してやる気満々。
弾けさえすれば採用してくれるもの、と思っていました。
結果は不採用でした。

それは、音を出す以前の問題。

私は演奏に対してやる気に満ち溢れていたものの、そのバンドの出す音には、今ひとつ心打たれていなかったのだと思います。
そのような気持ちは、相手方に伝わるもの。
後日電話があり、「やはり、僕たちのやっている音楽を気に入ってくれないと…ね」とやんわり言われました。

例えば会社にだって、社風や社是というものがあるはずです。
社風は気に入らないけど仕事はやりまっせ~、と言われたら、社長さんはお困りでしょう。
それ以前に、その会社を命がけで引っ張ってきた社長さんに対して失礼…というもの。

それが会社でなく、音楽のような表現活動であれば尚更のこと。
あの時のバンドリーダーの方には、本当に申し訳ないことをした…と今でも反省しています。

2015/09/05 杜哲也


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