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【第91回/詞先と曲先】

しせん、きょくせん、と読みます。

ある意味、業界用語と言って良いかもしれません。
ワードで打っても、変換されませんでした。
ウィキペディアには「しさき、きょくさき」とルビが付いていました。
(…全くもう、デタラメを書かないで欲しい。)

歌を書く時、
・先に言葉があって、それに音楽を付けていくのを「詞先」
・先に音楽(特に旋律)があって、それに言葉を乗せていくのは「曲先」
と言っています。
音楽活動をする人の多くは自分のスタイルを持っていますから、詞先曲先、どちらがやり易いかは人それぞれです。

私は圧倒的に詞先です。

まず、文字で表現された世界に入り込んで、その空気感にマッチする曲のキャラクターを絞り込みます。
それをぼんやりと頭の中で鳴らして、テンポや拍子を決断します。
そこから具体的な言葉を乗せていきますが、この時、言葉の持っている抑揚やリズムが音楽の一部となって頭の中を駆け巡ります。
…私にとっての「詞先」はこんな感じで、ある程度パターン化された自分の方法というものがあります。

ところがここ数年、曲先で書く機会が度々あるのです。

…いやびっくり、これはこれでなかなかオモシロイ。
同じ「歌作り」という作業が、ここまで異なるか…と新鮮な喜びに浸っています。

果たして、作詞家はここにどんな言葉を乗せてくるのか。
そして、シンガーはこれをどう歌い上げてくれるのか。
…こんなことを考えつつ、私にとってはメチャ新鮮な「曲先体験」を楽しんでいます。

→2018/03/01 杜哲也


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