column
【第108回/サマー・フォーカス・イン】
これは、夏の野外イベントの定番として、20歳前後の私がしばしば足を運んだ音楽祭の名称です。
時期としては、1980年を跨ぐ数年間です。
私にとっては実に強烈な音楽体験で、もう40年も前のことなのに、夏になると今でも鮮明に思い出します。
フジロックフェスティバルやSUMMER SONICの先がけのような存在だと思うのですが、当時の私は小さなウッドストックに足を運んでいる気持ちでした。
(…すべて行ったことがないので、あくまで想像。)
会場は日比谷の野音。
適度にのんびりした空気が漂っており、実際、ほどほど空席もあったため、疲れると後ろの席で休息を取りながら聴いていました。
お祭り色が強いのにいつも独りで行っていたのは、私の性格もありますが、繰り出される音楽そのものに、かなり熱狂していた証拠です。
渡辺香津美、杉本喜代志、向井滋春、坂本龍一、鈴木コルゲン宏昌、岡沢章、小原礼、村上ポンタ秀一、古澤良次郎、生活向上委員会…などなど、みんなこのサマー・フォーカス・インで初めて聴きました。
中でも、太陽が落ちて照明に灯がともる、天然のショーアップ効果と共に登場して、とんでもない音を出す山下洋輔トリオは強烈でした。
私の音楽志向が、ロックからジャズに移行していく時期と重なります。
若い頃のこういった体験は、その人の人生を決めてしまいます。
人間の社会が、政治や経済を土台にして動いていくと、不思議と争いごとが起こります。
でも、文化こそが人間社会の根底を支えるのです。
少なくとも私は、そう信じています。
社会が平和でないと、音楽は存在出来ません。
音楽がそこにあることによって、逆に平和を創り出すのです。
===============2019/08/03 杜哲也
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