column
【第117回/“劇場閉鎖は演劇の死”を考える】
ご存知ない方のために申し添えますと、これは今月1日の朝日新聞に掲載された野田秀樹さんによる署名記事のことです。
新型コロナウイルスによって多くの舞台芸術が中止になる中、分かり易い文章で公演の継続を訴えています。
私は、掲載されたその日に運良くこれを読むことが出来ました。
一読した直後、私の考えは野田さんに近い…と感じました。
ただ、色々なことを考えてしまう別の自分がいることは確かなので、大新聞に載せるという前提で書くとなれば、言葉も選ぶでしょうし勇気も必要。
少なくともあれからの私は、野田さんの文章に強く背中を押してもらって生きています。
酷いなぁと思ったのは、ヤフーのコメント欄。
批判一色です。
こういう難しい問題についてこそ、賛成反対双方の意見が並ぶのは当たり前。
そして、この文章に賛成の人も反対の人も心は揺れるもの。
どうして、そこをコメントする人が全くいないのですか?
反対意見が存在しない社会、私はこれが嫌いなのです。
実は、記事が出てから1週間くらいして、野田さんが館長を務める東京芸術劇場に行く機会がありました。
そこで上演予定の野田作品が、中止になっていました。
私はこのことで、野田さんの言行不一致を批判する気には到底なれません。
相思相愛でも、別の道を歩むことになる同志たちなんて沢山います。
税金で建てた大規模施設で館長さんをやるからには、それなりの辛い状況があることでしょう。
むしろ私のような立場ではなく、芸劇の館長が書いた文章だからこそスゴイ、…そう考えています。
= 2020/03/14 杜哲也 =
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