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【第134回/裁判官への架空インタビュー】

現役裁判官、鯖木益三(さばき・ますぞう)さんへのインタビューです。

犬田:鯖木さん、初めまして。週刊文秋の犬田比由子(いぬた・ひゆこ)です。今日はよろしくお願いします。
鯖木:はい、よろしく。
犬田:まず、取材を受けて頂き有難うございます。裁判官の方が、雑誌のインタビューに応じて下さるのは、珍しいですよね。
鯖木:我々裁く側の人間には、取材を受けない…という大原則があります。美人にマイク向けられて、色々ボロが出るとマズいでしょ。
犬田:編集長もそこを狙いたかったようなのですが、社内には私レベルしかいないもので…すみません。
鯖木:いえいえ、ビールまで用意してくれて有難う。今日は何でも喋りますよ。
犬田:今回の、現職大臣による交通違反、しかも現行犯逮捕。国民は皆呆れている一方で、司法の判断は分かれているようですが。
鯖木:現行犯ってね…あなた、自転車の二人乗りでしょ。売れればどんな書き方してもいいっていう、文秋さんらしいやり方だよね。
犬田:二人乗りは、立派な交通違反です。
鯖木:もっと、ハイレベルな取材を受けるのかと思ってた。
犬田:確かに。お尋ねしたいのはそこではなく、政治家の醜聞と裁判官の醜聞の違いについてです。
鯖木:そうだった、そうだった。
犬田:お陰様で我が週刊文秋では、多くの政治家の皆様を取材させて頂きました。社の方針で、これからは同じ三権の一翼を担う裁判官の方々にもバランスよくご登場願おうと…。
鯖木:裁判官なんて、みんな臆病者だよ。何とかボロが出ないよう、セコく生きてれば出世出来るんだから。
犬田:鯖木さんのような方は、珍しいですよね。
鯖木:俺なんか、悪いこといっぱいやってきたからさ、30歳で出世街道から完全に外れたね。
犬田:これからの司法は、どのような方向に向かうべきでしょうか?
鯖木:裁判官は、自分の意見をしっかりと述べること。政治家だって、しかるべき立場になったら定例会見やるでしょ。文秋さんにも頑張って頂いて、マスコミに登場しない裁判官は信用出来ない、という空気を作ってくださいよ。
犬田:裁判官にキャラクターが付いてしまうと、マズいことになりませんか?
鯖木:裁判官も人間であることを知ってもらうことの方が、よっぽど大事でしょ。遠~い世界の偉~い人が裁く…という、今の雰囲気こそ異常ですよ。
犬田:私たちも、権力の監視というお題目を、ご都合主義で解釈しないよう注意したいと思います。鯖木さん、今日は有難うございました。
鯖木:OKお疲れ。次回も比由子ちゃん、指名するよ、またな。

= 2021/08/06 杜哲也 =


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