column


【第139回/宇宙の話、挑戦の話】

昨年12月、実業家の前澤友作さんがロケットに乗って、国際宇宙ステーション(ISS)に12日間滞在しました。
無事に帰国(…と言うより帰星?)した彼が、1月7日、日本外国特派員協会で記者会見を開きました。

話し方・表情・言葉の選び方などは、何処にでもいそうな極々普通のお兄ちゃん風。
孫正義さん、柳井正さん、三木谷浩史さん…など、他の実績豊かな方々に漂う風格からは無縁です。
夢を持った子供がそのまま大人になったような前澤友作さんの口から、週末の熱海旅行の話を聞かされるような感じで、宇宙の話を聞くことが出来ました。

今回私がこの記者会見のことを書こうと思ったのは、前澤さんご自身のYouTubeチャンネルがきっかけ。
彼はISS滞在中に、スマホで何本も動画を撮影して宇宙船内の様子を日本語で地球に伝えています。
宇宙滞在中ということは知っていましたので、びっくり仰天しました。

私にとっては摩訶不思議なこの体験によって、YouTubeという媒体の素晴らしさを再確認しましたが、それと同時に、人間というものには、未知の領域に挑む、押さえることの出来ない本能的な強いエネルギーが備わっていることを改めて感じました。
そして、この、遮二無二前に向かう力こそが人類の歴史を作ってきたのだと思います。

1986年、スペースシャトル「チャレンジャー」の爆発で全米が沈んでいる時、レーガン大統領が「このプロジェクトを止めることはない」と発言したのを覚えています。
日本の指導者なら「検証結果がはっきりするまで計画は凍結する」と発言するのではないでしょうか。
前澤さんは記者会見中、「挑戦し続けることが大切」「挑戦に失敗は付き物」「恐れるな」…こういった内容の発言を沢山されていました。

宇宙船で聴いていた音楽が、(バッハやベートーベンではなく)レディオヘッドだったことも、前澤さんらしいと感じます。
また、機械だらけの殺伐とした船内に「ISSクルーの皆様のために」と、友人に描いてもらった絵を持って行ったのも実に良い話。
ともすると、守りに入ってしまいがちな性格の私にとって、大きな勇気を頂いた記者会見でした。

= 2022/01/08 杜哲也 =


《homeに戻る》