【第145回/桜田淳子】
私と同世代の日本人であれば、この名前を知らない人はいないでしょう。
1970年代、山口百恵、森昌子と共にひと時代を築いた、ビッグアイドルです。
彼女は、34歳で某宗教団体の合同結婚式に参加し、芸能界から引退しました。
アイドルは事実上、自由な恋愛が不可能な時代であり、彼女なりに苦しい立場だったと想像します。
安倍元首相が狙撃されたことによって、その宗教団体が久しぶりにクローズアップされています。
今回、桜田淳子さんには、3人のお子さんがいらっしゃることを知りました。
その方々の気持ちに立ってみます。
幼少時の彼らにとっては、愛すべき「母」がいるだけで、「桜田淳子」は無関係でしょう。
ところが育つに連れ、何をするにおいても「桜田淳子の子供」というバイアスが掛かる現実を知る…これは大きな不条理だと思います。
恐らくそのうち、「桜田淳子の子供である」ことを隠したくなるのではないでしょうか。
少なくとも、積極的にはアピールしたくないのではないでしょうか。
対抗する手段はふたつ。
「桜田淳子」からの決別、または「信者になる」、このどちらかです。
前者は自分の出自を否定することになり、後者はその宗教団体の閉ざされた社会で生きていくことになり、いずれも辛い選択です。
昭和48年の大晦日、最優秀新人賞を獲得した、彼女の輝きが忘れられません。
安倍さん銃撃によって、芸能・政治・宗教、この3つが私の中で奇妙に絡み合いました。
桜田淳子・安倍晋三・山上徹也、お三方はいずれも、とんでもないことをやった人たちです。
でも当人たちは、もしかすると当然のことをやったのかなぁ…と考えると、少し恐ろしくなりました。
= 2022/07/16 杜哲也 =