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【第152回/LPレコード大量処分】

先日、1000枚を超えるLPレコードに別れを告げました。
長年にわたって占拠していた場所は、床と壁がむき出しになって、新たな呼吸を始めています。
その重さを受け止めていた床には、幾つもの窪みが残っていました。

中学生になった頃から始まったLPコレクションは、50年以上にわたって私と人生を共にしました。
友人たちとの貸し借りで作ったカセットテープは20年前に処分したものの、レコードだけはどうしてもその気になれませんでした。
この音楽体験があったからこそ、今の私があることは間違いありません。

特に、中高生の6年間に出会ったLPは特別な存在です。
手にしたジャケットを様々な角度に変えては眺め、出来る限り大きな音量でその音楽に浸る時間は、当時の私にとって正に至福の時間でした。
翌日の学校で話が盛り上がるのは言うまでもありませんが、その後、例え何十年経過していても、この話が出来る人と巡り合えば、コミュ障と言われる私でさえ、立ち所に友だちになれます。

私は、人生において、このような経験を持っていることこそ大切だと考えています。
更に言うと、そういった体験を「うん、そうだね」「あれって、ホントにいいよネ」と言ってくれる人たちに囲まれて暮らすことこそ、その人の幸せを作ると考えています。

私の場合、世代的にレコード文化が全盛だったことにも恵まれましたが、このような存在は、誰にでも何かしらあるはずです。
絵や彫刻でもいいですし、料理や飲み物でもいいですし、宗教や哲学といったものでも良いと思います。
それらの最高に幸せな気持ちを、誰しもが大切に出来る世の中であり続けて欲しい、と願わずにいられません。

数日前、YouTubeでピンク・フロイドの「虚空のスキャット」をコンサート映像で聴く機会があり、涙しながら聴きました(…ホントに涙が出るのデス)。
そして、この曲が終わると、LPをB面に裏返して「マネー」を聴くことを思い出しました。
…皆様、どうかご安心ください。
大量処分をしましたが、「狂気」はまだ手元に残してありマス。

= 2023/02/07 杜哲也 =

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