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【第156回/漢字・ひらがな・カタカナ】

日本語の特徴のひとつに、漢字・ひらがな・カタカナの絶妙なバランスがあります。
これら三つが程よく混ざっている文章を読むと、単に分かり易いだけでなく、自国語の美しさや奥深さを再認識することが出来ます。

・プレゼント有難う御座います。皆様に宜しくお伝え下さい。
・プレゼントありがとうございます。皆さまによろしくお伝えください。
両者は読み上げると全く同じですが、見た目の印象は大分異なります。時と場合により、適切な判断が求められる…と認識しています。

そんな視点から日本語を眺める時、どうにもやるせない気持ちになることがあります。それは…、
・処方箋/処方せん
・剥奪/はく奪
などの妙な混在。これらは、日本語の美しさを明らかに乱しています。

恐らく常用漢字表の理由から、大手マスコミの側は仕方なく規制を受けるのだと想像しますが、もしそうであれば、自由なネット空間ならそのしがらみから解放されるか…と思いきや、
・草彅剛/草なぎ剛
・鄧小平/トウ小平
などを目にすることがあります(…恐らく別の理由から)。

私は単に「美しい日本語を守る」という意識から書いているのですが、
・子供/子ども
・障害/障がい
などに至っては、書き手の思想をチェックされるような不快感があります。
社会的弱者と言われる側から批判を受けると、例え全く身に覚えのない事柄も従わざるを得ません。

当columnでは、筒井康隆さんが言葉狩りにブチ切れる話(第140回/“美女”は消えますか?…を読んで)や、分かりにくい固有名詞の話(第9回/気になる名前)を書いたことがあります。
私は数年前に片耳の聴力を失っており、そのことは文字通り「障害」だと思って暮らしています。
それを「障がい」と書くことで「弱者に優しい証明」にされても困りますし、私としては「美しい日本語を大切にしてください」という気持ちの方が遥かに強いのです。

= 2023/06/01 杜哲也 =


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