【第170回/鈴木宗男議員】
鈴木宗男議員の、外国特派員協会での記者会見を見ました。
会見では、ロシアを再訪した意義を丁寧に説明すると共に、記者たちとの十分な質疑応答の時間も確保され、約90分に渡るやり取りは、政治家の記者会見としては近年稀に見る濃い内容だったと思います。
日本にいると、どうしても西側諸国の目線でウクライナ情勢が語られることが多く、ロシア側の立場を知る機会が少なくなります。
私自身もその空気に染まっているのだとは思いますが、率直に申して、彼の語る内容は大変ロシア寄りだと感じました。
しかしながら、その口調や表情からは、偏狭なナショナリズムを感じることはなく、むしろ、今この役割を果たせる政治家は自分しかいない…という自信と使命感に満ち溢れていました。
「アメリカは、大量破壊兵器がある…と言ってイラクに侵攻したのにその兵器を見つけることが出来ず、NATOは東方拡大させない…と言っていたのにどんどん広げてくる。」
「ロシアの指導者はシベリア抑留について謝罪したが、アメリカの指導者は原子爆弾について誰一人謝罪しない。」
このような歴史の不条理を具体的に幾つも挙げながら、日本は隣国ロシアと仲違いしてはいけない…と力説します。
少なくとも私には、北朝鮮渡航を強行した国会議員よりも遥かに頼もしく見えました。
鈴木宗男議員は現在76歳。
失礼ながら、彼にはダーティなイメージが付いて回ります。
中川昭一議員との弔い選挙(1983年)、衆議院からの辞職勧告決議(2002年)、収賄罪で実刑収監(2010年)…などを経て、公民権が回復したのは、比較的最近(2017年)のことです。
何かを成し遂げる人は、多くの場合反対勢力と戦うことになります。
特に政治の世界では偉人と悪党が表裏一体なので、その意味では、真実を追求する学問の世界とは評価基準が全く異なります。
今の政治家の中で、鈴木宗男議員ほど脛に傷のある人はいないでしょう。
だからこそ、言葉に説得力があるのです。
この世には、良い人間と悪い人間がいる…と考えるより、何かをする人と何もしない人がいる…と考える方が、私は遥かに好きです。
= 2024/08/10 杜哲也 =