column


【第172回/即興演奏におけるscale】

演奏は、空間を時間に置き換えた旅路です。
ガイドブックや地図を頼りに旅する人たちは、譜面通りに演奏している感じです。
一方、即興演奏をしている人たちは、密林を地図なしで歩いているようなイメージです。

即興という不確かな旅路では、最も頼りにしていた「譜面」がない中、獣道さえ無いジャングルの中を「歩け」と言われている感じで、前に進むこと自体なかなか困難です。
鍵盤は88個もありますから、「次にどのキーを押したら良いのか」というのは正に大問題。
誰かから指示でも受けない限り、「どうしたら良いか分からない」のが普通の状態でありましょう。

この命題を考える時、譜面のように頼りになる存在がscaleです。
基本となるのは、以下の5種類。
・Major Scale
・Minor Scale(4種)
後者は、楽典記載の3種類でも(初期段階なら)全然OKです。
これらを全調で練習することにより、piano特有の指使いを習得出来るのも、学習者にとっては大きなメリットです。

jazzでは、上記以外にも多種多様なscaleが使われます。
・Church Mode(7種)
・Dominannt Scale(7種)
・Blues Scale
などは、その代表的なものです。

これらのscaleは、単に「弾く」だけでも、そこそこ難しいです。
そして、実践でこれらのscaleを使うには、曲のどの部分にどのscaleを当て嵌めたら良いか…という「楽曲分析」の能力も求められます。

最後に、これらscaleの「使い方」を書いて締め括ります。

密林の中で獣道が見えてきた旅人は、そこを歩いて旅を続けることが出来ます。
しかし、「使えるscale」が見えてきたjazz pianistが、ひたすらscaleの上行下行を繰り返しても「音楽」にはなりません。
そこで、phrase学習が必要になります。

jazzらしいphraseを数多く弾いて、それらがどんなscaleから出来ているのかを確認し、またscale練習をする…この繰り返しによって即興という旅路は続いていくのです。


= 2024/10/24 杜哲也 =


《topページに戻る》