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【第22回/指、骨折の記】

昨年(=2011年)の7月、左手小指を骨折しました。
駅の自動改札に挟まれただけなのですが、あんなもので折れてしまう自分が何とも情けなく、それ以来、改札は「万歳」で通過。
事情を知らない人が見たら、何ともミョーな姿だと思います。

最初に「どうも普通の突き指とは違うな…」と感じたのは、第一間接が全く動かなくなったこと。
お医者さんに診て頂くと、「あ~折れてますねぇ」。
…どうも、これは「よくある骨折」らしいのです。

「マレット指」と言うそうです。
全く状況が読めない中、症状に名前が付くだけで何故かホッと一息。
しかも、何とも音楽家に相応しい名前。
「ふむふむ、そうか」と満足しつつも、よくよく考えれば「そんなこと、どうでもいいッ」。

こちらは一応、ピアノを演奏してお金を頂く立場。
慌てる私に、「大丈夫、治りますよ」と微笑む姿には、全能の神を見る気持ちになりました。「神様、お願い~」。

すぐに、手術日の設定になったのですが、世の中怪我をする人って、多いんですね。告げられた執刀日は2週間も先。
う~ん、さすが「よくある骨折」。
こちらは、ディズニーランドでもスーパーのレジでも、割り込みは大の苦手。
仕方なく、9本指での演奏が続きます。

人生初の手術は、正味1時間。
文字通り「まな板の杜哲也」は、観念して「全能の神」に左腕を差し出し、「もうどうにでもしてくれ~」。
部分麻酔のため、カチャカチャと手術音が聞こえる上、ご丁寧に映像をモニター画面で見せてくれる「大サービス」。
小さなネジ釘のようなもので固定する、という作業を、同時進行でしっかり確認。「あっ、今くっついた」。

…それから8ヶ月あまり。
今度は、そのネジ釘を抜き取る手術。
人間、1回目と2回目では、全く気持ちが変わりますね。
「私、慣れてますから…」とは言いませんが、取り巻きの綺麗な看護師さんたちに対して、どことなく余裕の態度で応戦。
手術室に流れていた、クリストファー・クロスやジャーニーを、きちんと鑑賞しながら「二度目のまな板」。

術後の経過を最終診断して頂いたのが、退院から55日後の5月末。
ゴーゴーゴー、万事順調。めでたく無罪放免。
10本指で演奏出来ることに感謝。
お世話になった3人の先生方、何人もの看護師さん、本当に本当に有難うございました~。

2012/06/01 杜哲也