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【第47回/飛び地】

地図上に「飛び地」というものがあります。
私が最初にその存在に気づいたのは、和歌山県の北山村です。
近畿地方の地図を見ていた時、和歌山県本体とは別に、三重県と奈良県の県境上に小さな「和歌山県」という領域があるのに気付いたのです。
地理的にマセていた私は、小学校低学年でそれを発見してびっくりしました。

北山村の場所は、そこに「和歌山県」という表記がなければ、東京の小学生にとっては何県なのか全く分からないでしょう。
いや、実際に和歌山県という表記があってもある種不思議な感覚が残るだけで、何の解決にもなりません。
こんな場所は、極めて珍しいのかと思いきや、その後、世界には実に多くの飛び地があることを知りました。

スペイン内の英国、ジブラルタル。
キューバ内の米国、グァンタナモ。
南米大陸にあるフランス、ギアナ。
本国より遥かに広いデンマーク、グリーンランド。
本国と比べると豆粒のようなロシア、カリーニングラード。
…などなど。
日本国内では、練馬区西大泉町や川崎市麻生区の飛び地が有名です。

言うまでもなく、県や国の境界線というものは人為的に線引きされたもの。
そして、この「線引き」という作業が人類は大の苦手分野。
何しろ、大昔から現代に至るまで、「線引き」にまつわる争いごとが絶えたことがありません。
私は、人類の争いのほとんどは広い意味での「線引き」に関することではないか…と感じているくらいです。
領土問題は勿論のこと、モラルや価値観、就業時間や税負担の割合など、すべては「どこで線を引くか」についての問題と言えます。

地図帳で飛び地を見る度、どんな経緯でそこが飛び地になったのかなぁ…と想像します。
飛び地を維持するのは、地続き領土に比べると遥かに大変なことでしょう。
それでも飛び地が継続されているのは、それぞれの事情や利害関係が複雑に絡んでなかなか解けないのだと思います。
…飛び地は、それを辞めるのもまたひと苦労なのです。

2014/07/12 杜哲也

※元さいたま市議会議員、吉田一郎さんによる「世界飛び地領土研究会」という面白いサイトがあります。
ご興味ある方、是非どうぞ。

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