column


【第87回/東芝とサザエさん】

昨年のシャープに続いて今回の東芝。
そこにあるのが当たり前…と思っていた大企業が、存続に向けて悪戦苦闘する姿を見るのはとても辛いものがあります。

日本には世界に向けて誇るべき企業が沢山あって、特に丁寧なものづくり文化は、同じ日本人としてちょっぴり誇りを感じていました。
20年前の山一證券やたくぎんは消滅しましたが、今度は存続させるのですから、株主たちの冷たい言葉に負けず、是非とも再建に向けて頑張って頂きたいです。

…ただ、私は財界人ではないので、東芝再建についてのコメントはここまで。
気になったのは「サザエさん」。

この国ではもう随分と長い間、日曜夜には「サザエさん」を観ることになっています。
ここまで続くと、長谷川町子が産んで東芝が育てた…とでも言いたくなる長さ。
その東芝が、来年(2018年)3月末で番組提供から降りるという報道が出ました。

4月以降も別の企業が提供を続ければ、番組は存続するでしょう。
財界人であれば、それによる宣伝効果などを考えてお決めになることでしょうが、私の考えは違います。
これを機に、是非とも番組を終了して頂きたい。
良い潮時じゃあないですか。

こうして時代を象徴する文化がひとつ終わり、それによって、次の新しい文化が生まれるのです。
番組を存続させるために費やされるエネルギーは、是非とも別のところに回し、新しい文化を作り始めて頂きたいのです。

そもそも長谷川町子さんは、漫画という形で発表しています。
アニメ化はいわば便乗商法。
番組がなくなったって、「サザエさん文化」は残りますよ。
このアクのなさは、日本人気質にとてもよくマッチしていますから…。

問題なのは、妙な懐古主義や波風を恐れる後ろ向きな保守的精神によって、つまらない現状維持が続いてしまうこと。
それが、文化の発展を妨げるのです。

グレンミラー楽団やペレスプラード楽団が、本人没後も長きに渡り来日公演を続けているのも私は好きではありません。
文化はそういうところには決して生まれないのです。
あんなものは、他人が作ったブランド力を利用したサラリーマンミュージシャンが、日本人から金を巻き上げるために興行を続けているだけなのですから…。

→2017/11/04 杜哲也


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