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【第88回/国民審査】

電話帳というものが、社会的に大きな影響力を持っていた時代のお話です。
当時は、分厚い電話帳の該当職業欄に電話番号が載っていないと、お仕事のスタートラインに立てない状況。
何せ、一般の人が連絡先を調べる手立ては電話帳しかなかったのですから…。

やる気のあるお店は、同業他社より少しでも大きな文字ポイントで載せてもらうよう、掲載料(=広告料)を上乗せします。
そしてあの時代、それは確かに十分見返りのある投資でした。

…以下は、その時代に私が実際に経験したお話。

電話帳広告を出すにあたり、見たことも聞いたこともない公益財団法人の会員になるよう、勧誘を受けました。
いや、それは勧誘ではなく、広告掲載に際しての必須条件(=踏み絵)。
最初、そんなバカなことを天下のNTTがするはずない…と思いましたよ。
だってその財団、電話帳広告とは一切関係ないでしょ…。

これは、「おたくの店のラーメンが食べたい…」と来店した人に、「まずは、お向かいの喫茶店でコーヒー飲んでから来てください…」と言われているのに等しい状況です。
憲法では、社会生活を営む際に「契約の自由がある」とされています。
意にそぐわない契約を強制される不条理をどうしても受け入れられず、若かりし私は電話帳広告から撤退しました。

この一件を思い出したのは、ネット上で元検事・前田恒彦さんの文章に巡り合ったから。
それは、先日下されたNHK受信料契約(=意にそぐわない契約)における最高裁判決を入口として、裁判官の国民審査について分かり易く書かれていました。

今回私が書きたいのは、電話帳のことやNHKの話ではありません。
…いい大人ですから、これくらいの不条理はもう受け止めますよ。
でも、国の三権を預かる人たちのこととなれば、話は別。

ご存知、×を書くことでその裁判官を辞めさせることが出来る、あの馬鹿げた紙のこと。
これを真っ当な審査方法に改めることに、一番強く抵抗しているのが最高裁だ…ということを、前田恒彦さんの記事で初めて知りました。
また、今の国民審査では、裁判官を辞めさせることが事実上不可能であることも初めて知りました。

NHK受信料に対して「正義の判断」を下している裁判官の皆さんが、もしご自身に対する「審査方法の欠陥」について訴訟を受けた場合でも、日本国ではその判決を下すのはあなた方なのです。
…ふざけんなッ!!!

→2017/12/08 杜哲也


[追記]
前田恒彦さんの記事は、今検索すればすぐに読めます。(→こちら)
ただ、ネット記事なのでほどなく削除されるでしょうから、リンク切れの場合は杜哲也までどうぞ。
しっかり保存してありマス…。


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