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【第92回/贅沢なお見舞い】

その病院は、二路線三駅の丁度真ん中あたり。
つまり、どの駅から歩いてもそこそこ遠いのですが、それだけ自然豊かな場所にある…ということ。
その日は天候も良かったので、お見舞い名目の良い散歩になるかな…とは感じていました。

まず、アレッと感じたのは、電車が単線なこと。
そして、三両程度の短い編成なのに、車内はガラガラ。
窓の形も、両端下の金具をツマミながら持ち上げる昔懐かしいタイプ。
極自然に、日頃乗らない路線の風景を見逃すまい…と、本や携帯電話はほったらかしになります。

たった5~6の駅で終着駅になってしまうので、降り過ごしに注意しつつ目的の駅に到着。
都会駅を見慣れている私にとって、立っているだけでも何故か幸せを感じる太陽と空気。
改札通路は幾つかあるものの、そのどこにもICカード読取機はありません。
少し手前にポツンと見慣れぬ形の機械がひとつあり、どの改札を通る人もそこにタッチしてからそれぞれの通路を抜けて行きます。

駅から病院までが、また幸せな道でした。
ゆったりとした道幅。
人も車もまばらに通るだけの長い直線道路。
飛行場、工場、倉庫…など、都会生活ではほとんど目にしない風景を楽しみながら歩きます。

「警察大学校」という看板発見。
脇に小さく「POLICE ACADEMY」と書かれた文字を見て、一人で大爆笑。
その隣の大学に通う若者たちが、道端の草花を話題に盛り上がりながら私を追い抜いて行く頃、病院が見え始めます。

そして圧巻は、病院周囲をぐるりと囲む桜並木。
正にどんぴしゃり、満開の時期に来られたことに心より感謝。
久しぶりに、最高に贅沢な時間を満喫させて頂きました。

(一日も早いご回復をお祈りします~。)

→2018/04/02 杜哲也


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